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2007/11/05

騙し騙される情報戦の世界

さて、ブログを書いていたら、12時を回ってしまった。

原稿の締切や、プロポーザルのまとめや、さらにきょうの講演会などが全部重なってやってきていたので、マット・デーモン主演の映画「グッド・シェパード」をずっと観ることができなかった。

やはり、講演会のあとは、詰まっている仕事を早々に片付けて、最後は映画に繰り出すのが順当なところだろう。外でなら、雑踏のなかならば、気持ちも和らぎ、すこしは仕事になるだろう。ということで、横浜の中央図書館から移動して、川崎のチネチッタへ向かった。映画のスタートまでの数時間利用して、チネチッタ川崎のパスタ屋さんで、締切が迫っている学生の方がたの論文添削を二つ行った。

パスタも美味しかったが、皆さんの草稿のほうも少しずつ熟しつつあるようだ。もうすこしの工夫と、努力が必要だが、それはそろそろ時間切れが近づいているので、労働密度の問題になりつつある。最後の粘りを期待したい

「グッド・シェパード」はおそらく評価が分かれる映画になると思われる。けれども、CIAを舞台にしていると聞いただけで、見に行きたいと思った。現在は、情報の世界だといわれて久しいが、その情報世界のなかでもとびっきりの「帝国」そのものがCIAだと思われる。

その原型がどのようなものであったのかは、現代人であれば知っておく必要があろう。濃密な情報世界なのか、それとも空虚な情報世界なのか、それが問題なのだ。

このような緻密な描き方は、決して嫌いではない。それというのも、実話風に描いているにもかかわらず、細部になると分からない部分がたくさんあるのだが、映画的工夫でうまく切り抜けていると思われる。たとえば、たびたび密告があるのだけれども、誰の密告なのか、すべて理解できるように作られてない。その点は残念な部分もあるのだが、それを想像してみる余裕をたっぷり与えているのだと観念してしまえば、かなり簡単に納得できる。

しかし、このような欠点を補っても、なおこの映画の魅力は減らない。評価が分かれるとしても、少なくともわたし自身は、かなり積極的な肯定派である。とくに、評価が分かれるであろう脚本に関して、かなり難ありとはいえ、重層化させた映画的なシナリオが素晴らしかったと弁護したい。

これだけ、騙し騙される関係、信用する信用しない関係、さらには、守る守られない関係を、ピアノ線の緊張の如くの仕切りをして、線の下を掻い潜らせるように描く手法はなかなかな趣向で面白かった。

アメリカといえば、通常は攻撃性の権化のように考えられているが、「誰も信じてはいけない」という伝統的な信条を語り継ぎ、アメリカにしては珍しい防御の典型としてCIAを舞台に描いたことで、アメリカ人の性格の幅をぐっと広げている。

米国にも、crony capitalism (仲間資本主義)があったのか、という描き方だった。生まれたときから知っていれば、情報戦の裏切りを防ぐ事ができるかもしれない、ということも確かではない。秘密結社を作って、他の人が知らない秘密を共有すれば、仲間を強固にするかもしれない、ということも反証されてしまう。

CIAの本質はあらゆる情報が集まってくる、情報の宝庫であり、権力と信頼が得られるはずの中核を形成するものであると考えられた。ところが、じつは組織のなかでは、人はひとりひとり孤独にならざるを得ず、その本質は空虚であるを、この映画はたっぷりと見せてくれる。とりわけ、自分の地位を守りきれずに、消えていく人たちの描き方が良かった。

人を疑って生きるとはどのような生き方なのか、人を信用するという生き方とはどのようなものなのか、典型例を見せてくれる。予告編のキャッチフレーズで、「子どもをとるか、国家をとるか」というのがあって、さあどちらなのか、というのも興味深々だ。それは、観てのお楽しみ。

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プロフィール

  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。