« 騙し騙される情報戦の世界 | トップページ | 卒論提出最終日の前日 »

2007/11/10

ボーン・アルティメイタム

ボーンが復活した。

いつも引用する形容語句「シャワーを浴びるように映画を観る」という言葉に、こんなにぴったりする映画はこれまでになかった。

隣に座った人は、始まってからもポテトチップを食べていて、ポリポリという音が聞こえていた。ところが、最初の事件が終わって、ロンドン新聞記者事件が始まるころには、すっかり画面に釘付けになり、その音が聞こえなくなった。

ノンストップムービーの名前に恥じない、アクション映画の最高峰だと思う。モロッコのタンジール事件では、屋根の上を逃げながら、ターゲットを追うのだが、物干しの洗濯物を手に巻きながら走るシーンがある。屋根の境にある盗難よけのガラスから、手を守るためだ。

ノンストップであるためには、ガラスを認識してから洗濯物を取るのでは遅いのだ。動物的な本能というのは、こういうものだと思う。このあたりの描き方は、アクション映画ならではのフィクションを成り立たせていて、ほんとうに面白い。認識を逆転させる楽しさがあるのだ。

主人公ジェイソン・ボーンの自由さは、身体能力の超越性だけではない。むしろ、記憶を失ったという制約のなかでの自由さであって、あらゆる身の回りのものからの絶対的な自由さなのだ。

前作同様、世界のあらゆるところに神出鬼没であるのは、アイデンティティの無さがそうさせている。だから、わたしたちはこの自由さに憧れて、映画を観るのだが、決して現代人はこのような絶対的な自由を手にする事ができないのだ。けれども、だからこそ、ボーンに憧れるのだ。

それにしても、今回もグッド・シェパード同様に、CIAが描かれているのだが、こんなにいとも簡単にボーンに騙され続けるマヌケなCIAの上役は存在するのだろうか。そこは映画的ナンセンスとして、大目に見ておこう。

第1作からずっと出ていた、脇役の女性諜報員がいる。最初から最後まで感情を見せた事が無い役として映ってきていた。いつかは事件に巻き込まれて死ぬ役だと思っていたが、なぜか生き残っていた。そのわけがこの映画の最後のシーンで理解できた。このために、生かされ続けてきたのだ。映画の虚構性というのは我慢に我慢を重ねて最後に花開く、この仕掛けは素晴らしいと思った。

第1作が海のなかから始まり、第3作もまた海のなかで終わる。このように完結性を重視している点でも、この映画チームがかなり成功裏に物事を進めてきていることがわかる。

きょうは初日だったので、客の入りはかなりあった。とくに目立ったのは、外国の人びとが多かったことだ。父親が息子たちを連れてきていたり、留学生たちが友だちと連れ合ったりしてきていたようだ。

帰りに、上大岡の駅のホームで電車を待って、ベンチに座っていたら、いつもメールで連絡を下さるHさんが近づいてきた。ここで福祉の実習を勉強しているのだという。相変わらずの勉強家ぶりである。

きょうは午前中から、修士の方がたとのゼミナールが6時間ほど続いた。最後の詰めに入っているために、長時間に及んだ。それぞれの中心がはっきりしてきたので、あとは、どのくらい余裕を持って、原稿に挑むかという状況だと考えている。

ジェイソン・ボーンのようにはいかないかもしれないが、動物的な勘を働かせて、いまの状況を打ち破って、次へ進んでいただきたい。

« 騙し騙される情報戦の世界 | トップページ | 卒論提出最終日の前日 »

映画・テレビ」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/173786/17038917

この記事へのトラックバック一覧です: ボーン・アルティメイタム:

« 騙し騙される情報戦の世界 | トップページ | 卒論提出最終日の前日 »

社会経営研究配布中

  • 2015study

社会経営ジャーナル配布中

  • 2015journal

開いている講義    「社会的協力論」

  • cooperation

「音を追究する」第13回・第14回

  • art

「多様なキャリアを考える」第2回・第3回・第4回

  • cooperation

「グローバル化と私たちの社会」第11回

  • cooperation
2017年3月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31  
無料ブログはココログ

Recommend

プロフィール

  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。