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2007/10/08

図書館の最上階

大学時代に、千葉県の船橋市に住んでいて、市立図書館へよく通った。西船橋へ移るまえの建物で、一世紀前と思えるほどの施設であった。

当然、冷房などはなく、なぜかその季節はかなり暑かった。直射日光のなかに出ても、これほど暑くはないと思うくらいだった。田舎の小学校で、博物館になってしまって、そのなかに木製の椅子や机が出てくるが、それと変わらないものが置かれていて、机に汗が染み込んでいた。

あまりに暑いせいか、それとも、施設のせいか、人影は少なかった。

今日の図書館は、さすがにこのような施設のところはあまりない。あまりに快適なので、つねに混んでいるのが、玉に瑕である。今日は祭日であるのだが、それにもかかわらず、これだけの人びとが押しかけるという状況は尋常ではない。

ところが、今日の図書館(横浜中央図書館)は、蒸し暑かった。冷房を切っているので、最上階には、下からの湿気が上ってくるのだろうか。最上階は、5階で人文科学系の閲覧室になっている。来月、この5階を使わせていただいて、話をする。当日使う資料を点検したり、新たな資料を開拓したりするために、最近ここに通ってきている。

図書館として、たいへん使いやすいと思う。けれども、明らかに人気が仇となって、混んでいるのだ。今日も、ほぼ満席状態で、4人掛けのテーブル席までもいっぱいなのだ。そのため、湿気も限界状態である。

さきほどの船橋図書館のように、からっと晴れているが、極端に暑いほうがよいか、それとも、この横浜図書館の場合のように、しとしと雨が降って、蒸し暑いほうがよいか・・・。やはり、どちらも読書する環境ではないな。

今日は、明治期のいくつかの文献をコピーするために来たのだが、そのなかで警察資料がとくに面白かった。明治期には、巡査が地域に密着していた時代であり、産業調査も、巡査が街を回って、情報収集に当たっていたのである。

工場や職工の状態は、かなり克明に記録しているが、そればかりでなく、とくに興味を惹いたのは、風俗関係の資料だった。横浜のどの町に娼妓・芸妓が何人いて、どのような待合にいたのかがわかる。もちろん、目的は別の資料だったので、ほどほどに切り上げたのだが・・・。

明治期の中ごろには、急激にその人数が増えるのだが、たとえば300人から600人にその人数が増えるということは、どのような状態なのであろうか。通常の労働力とは異なるのだから、募集するというわけにはいかないだろうから、そこには想像を絶する「募集」が行われていたのだといえよう。

江戸時代のドラマを観ていると、岡場所においてもっとも管理システムが強く働くのを描く場面をよくみるが、明治期でも官許の場所であればあるほど、巡査の探索対象になっていたのは想像されるところである。その結果が、これらの綿密な資料として残されているのだといえよう。

明治期の巡査は治安の安定を担当していただけではなく、情報収集と探索に相当な時間を割いていたことがわかる。これだけ綿密に調べられていたら、社会も人間関係も、かなり息詰まるものだったにちがいない。ときどき統計のなかに、担当者が変わって、一貫性が失われているものがあるのは、ご愛嬌だが・・・。

などなど、楽しんでいるうちに、蒸し暑さも居心地の悪さも忘れて、出てきた汗も引っ込んでしまうところが、図書館という魔法の場所の特色なのかもしれない。この図書館の最上階で、寝起きしてもいいなあ、という気分になってくる。

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プロフィール

  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。