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2007/09/10

渋谷にて

渋谷に出るんだったら、お願い!と、妻から金融機関関係の書類とカードを渡された。

なぜ横浜に住んでいるのに、渋谷近辺に銀行などの口座があるのかといえば、下北沢に住んでいたときの大家さんが指定してきた銀行口座がT大前の銀行であったり、大学院時代に渋谷に住んでいたり、結婚当時八王子に住んでいて取引先が渋谷支店であったりしたからだ。

引越しのたびに口座を設けて、その数が増え続けているのだ。もちろん、預けるお金が増えているわけではないので、それが残念なところだけれど。今日の手続きというのは、話すのもお恥ずかしいのだが、口座の暗証番号を忘れてしまい、預金を引き出すことができなくなってしまった、ということなのだ。

歳をとると、こんな失態が続くのかと思いながら、わざわざ渋谷に出なければならなかったのだ。今後のことを考えると、口座の数が多すぎるし、忘れるような口座は持たないほうがいいということかもしれない。

などなど問題はあるが、今日のところは効率よく銀行を回ったので、待ち合わせの時間まで、かなり時間が空いてしまった。いつでもどこでも仕事ができるのがこの商売のよいところなのだが、渋谷の街中で、仕事のできるところは限られてしまう。

ひとまず、名曲喫茶ライオンへ腰を落ち着けることにした。ここは大学院時代に、以前お話した「ブラック・ホーク」同様、とくに夏の暑い期間にこもって仕事をした。コーヒー一杯で、何時間いても大丈夫なのだ。

070910_191502ちょうど入ると、マーラーの9番がかかっていて、最後の絶え入るような終わりの終わりという音を、ここのスピーカーが忠実に再現していた。偶然なのか、その後も、それほどクラシック音楽に素養のないわたしでもわかるような曲が続いた。

ブラームスのピアノコンチェルト、我が祖国モルダウ、1812年(この曲は、中学校時代に毎月、日フィルの無料音楽会があって、そのアンコール曲の定番だったので、懐かしかった。)そして、ショパンの夜想曲。この喫茶店では、リクエストで演奏曲が構成されるのだが、カラヤン指揮のものが今日は多かったような気がする。愛好家が多かったのだろうか。

もし都心に残って住んでいたら、都内の図書館を回って、歩きつかれたら、帰りにここへ寄って、曲を聴きながら一眠り。という至福の老後計画も実現していたのかもしれない。

けれども、現在は一眠りなどという余裕が無いので、一仕事できることで満足しなければならないだろう。

「渋谷で会う、なんて不思議な感じですね」と言いながら、待ち合わせ場所へ現れたのは、放送大学のFアナと、ブログ仲間のKディレクター。来年度新設科目『市民と社会を知るために ―名著に触れよう』という、ラジオ番組なかでお相手をしていただくことになったのだ。

「ロビンソン・クルーソーの冒険」を取り上げることになっているのだが、やはり議論しているうちに、わたしの読み方ではとうてい想像つかない表現が、いくつも飛び出して、たいへん興味深かった。

たとえば、ロビンソンはその場その場で、くるくると意見を変えてしまう。神に感謝しているかと思えば、神なぞ役に立たないと言う。この点に注目した解釈は、マルクスにもないし、有名な大塚久雄の解釈にもない。ロビンソンの「二重人格」説というのはじっさい近代の本質を衝いていて面白いと思う。

無人島でのロビンソンの労働観についても、意見が百出した。どのようなまとめになるのかは、ラジオ放送を聴いてのお楽しみ。

Kさんは、ここの議論をそのままラジオに載せたほうがいいかも、などという。「歴史は夜作られる」のだ。番組は制作前のほうが圧倒的に面白い、などと言われないように、本番も頑張りたいと思う。

お二人には休息の時間を費やさせてしまって申し訳なかった。でも、このような楽しみがあるからこそ、番組を作ろうという気になるのだと思う。The Bandの「I shall be released」が店のスピーカーから流れてきて、渋谷百軒棚は変わらないことも確認できた。今日の最後のコーヒーは、渋谷BYGにて。

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プロフィール

  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。