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2007/09/19

絵画趣味

070919_164301 YP大学から、自転車で10分ほど郊外へ出たところに、県立の美術館と文学館があり、甲府に来たときには立ち寄ることにしている。

今日の講義では、朝の9時からしゃべりはじめて、夕方の4時までかかった。この頃には、学生のほうもくたびれてきたらしく、集中力を欠いてくる。ここはやはり、年の功で、いくつかの方法を用意しているのだが、それでも以前の調子にはなかなか戻らない。気分を変えたり手を動かしてみたり、いろいろできることは一応やり尽くす。それでも、1日は長い。

疲れがだいぶ溜まってきたので、講義の後、気晴らしにでかけた。この県立美術館を訪れることにしたのだ。ミレーの落穂ひろいなどで有名なところだ。玄関のよこには、ミレーの肖像画が掲げられている。余程、ミレーに耽溺したひとが、ここを作ったに違いない。

それで思い出したのだが、中学校時代の美術の先生が、じつはほんとうの職業画家だった。画家が本業で、1週間に一日だけ、教えに来ていたのだ。風貌からして、格好を気にしないタイプで、アトリエをそのまま抜け出してきたような感じがあった。

その先生の絵の解釈は、かなり楽しかった。思ったこともないような見方をするので、美術の時間は、絵を描くときよりも、話を聞く時間として意味があったような気がする。おそらく、わたしが絵を見るようになったのも、この先生の影響があったのではないか。絵に関しては、以前話題にした天才Kと、この先生が恩師ということになる、と勝手に考えている。

じつは、この先生が珍しく、声を荒げて、美術の教科書に載っていたミレーの絵を批判し始めたのだ。こんなのは、絵ではない。単なる写実が絵ならば、絵の存在価値はない、と言い切ったのだ。中学の美術なので、無難な解釈で済む授業のはずであった。

おそらく、自分の絵との対比が頭の中にあったのだと思われるが、今となっては聞くわけにはいかない。そんなことがあって、どうも写実主義の絵画は、わたしもあまり好まない傾向があることに、最近気がついた。このときのことが影響しているに違いない。

試しにという訳ではないが、今日の県立美術館では、ルーベンスとブリューゲルを特集していたので、観ることにする。このふたりの作品には、寓意などが盛り込まれており、写実主義というわけではないとも思われるが、一緒に来たプラハ国立美術館所蔵の他作品の多くには、写実的なものが多かった。この美術館の特色を現わそうとしているかのようでもあった。

写実でも、ほんとうに描かれた写実は現実を超えている、と思う。ルーベンスのもの、そしてルーベンスの工房で作成された「スピノーラ侯の肖像」などは、その典型だと思う。写真で撮ったよりも、現実的なのだ。

帰りに、学生から聞いたハンバーグ屋さん「パレット」へ寄ったが、まだ時間が早かったので営業していなかった。そこで、宵の口までまだまだだったが、半年前にも入った「フォーハーツ」でワインとパスタをいただく。最後のコーヒーは、これもまだ早いと思い飲まずに、黒エールを1パイント飲んで宿舎に戻る。明日は気分を入れ直して、講義に身を入れようと思う。

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  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。