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2007/09/20

巻くものから結ぶものへ

集中講義はなんとか山場を乗り越えた。学生たちにとっては、かなり大量の知識が一挙に享受されることになるが、頭の中は、整理されてきているだろうか。

やはり、4日間連続というのは、以前にも言ったように、体力が勝負だ。1人の学生が、体調を崩し、保健室で寝ている。今日は無理しないように伝え、家へ帰すことにした。また、4日間連続で日程を空けることは、わたしがたいへん辛かったように、学生にとってもこの間縛り付けられたと同様の状態になるので、厳しかったに違いないのだ。講義もこうなってくると、闘争の場だ。

講義というのは、ほんとうに不思議なものだと、いつも思っている。知識を伝えるには限界があることはわかるのだが、それでも理解を求めて最大限努力を行う。最初に、ひとつの問題点を説明する。それがうまく説明できれば、理解は進むがそれでも限界はある。そこで継続させて、納得するまで言葉のやり取りが行われる。

傷を負ったときに、その傷に包帯を巻くようなものかもしれない。絆創膏を貼るように、本来は傷口に直接薬を塗れば、それで良いのだが、やはり包帯を巻くと、精神的な作用だと思われるが、なんとなく効くような気分になってくる。

いま映画館にかかっている「包帯クラブ」の言いたいことは、良くわかる。つまり、本来包帯は傷口に巻くものだと考えられている。ところが、ある日偶然に柵と柵の間を包帯でつないでみた、という話だ。

巻くことから、結ぶことへ、包帯の持つ関係性を変化させてみた、という点が中心なのだ。そのことで何が生ずるのかが問題なのだ。

見えなかったものが見えてくる効果がある。どこに問題があったのかを表示する効果がある。そして、何よりも人と人を結びつける効果が出てくるという発想である。これらの効果がどのようなシーンで描かれているのかは、映画を観てのお楽しみだ。

フレンドシップという人と人の結びつきは、中間的なだけに、たいへん厄介なものでもある。過剰になればお節介になるし、断絶が深まればそれっきりになってしまう。これまで幾多の友情論、社交論で描かれてきたが、この関係には特別の距離感が必要だ。

包帯クラブの場合には、友情のネットワークから拡大して、すこし広いネットワークを形成しようとする。包帯が象徴するのは、傷や病気の治療という狭い範囲への拘束である。それが、街のなかの対象物に巻きつけられることで、社会のなかの「傷口」の問題を表示してしまうことになる。もちろん、その副作用も存在し、それも丁寧に描かれていて興味深い。

巻くものから結ぶものへ、というひとつの工夫が効いている映画であることを評価したい。全体は面白かったが、わたしの趣味からすれば、描き方が後半になってすこし饒舌になっているのではないか、と感じた。巻かれたものや結び付けられたものに対する解釈は、多様なので、もうすこし説明を抑制したほうが、観るものの想像力を誘うのではないだろうか。高校生の観客を意識して、青春ものの雰囲気を出そうとしたのだろうか。

今日の食事は、昨日時間が早くで断念した「パレット」で、フランスの田舎風ソースのかかったハンバーグ。帰りに、やはり「ロッシュ」に寄る。最後のコーヒーは、「ライト・ロースト」をいただく。酸味を残しつつ、苦味も逃がさない、けれども軽い味。この味は、偶然には出ない味だと思う。

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  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。