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2007/08/07

アニメの料理映画

アニメ映画は総じて嫌いだった。日本で評判になったアニメ映画も、子どもたちの付き添いでみただけで、それほど多くを見たわけではない。

とはいえ、子ども時代には、ちょっと古くなるが、東映映画で「白蛇伝」や、「猿飛佐助」などは熱心に観た。どうも、近年になってから、アニメ映画は苦手になったとしか思いようがない。

なぜ嫌いかといえば、映像が省略されすぎていて、大画面で見ていると、観るべきところが明らかに示唆的であることが多いところが気になってしまうのだ。そのくせ、それ以外のところは、のっぺりとしていて、落差が激しすぎる。

子供向けには、省略の多い映像は、原色で描く絵本が多いのと同じで、好ましいと思う。けれども、いつもクールな画像だけではいただけない。やはり、映画の画像はホットなものが良い。(と、ちょっと利いた風な理由を述べてみた。

それじゃ、アニメでも丁寧に描かれた、省略のないリアルな映像ならばよいのだな、といわれれば、そのとおり、と言わざるをえない。というわけで、本論にたどり着くまでに相変わらず手間取ってしまった。

映画『レミーのおいしいレストラン』(Ratatouille)を観てきた。最初の画面一杯に出てきた、田舎の家が素敵だった。赤い屋根に白い壁、かなり古くて、ねずみたちが住み着くには最適な家に見えて好ましい。ここで培われたテイストが、ねずみのレミーの味覚を養ったとすれば、あとの話はスムーズに進むことが予想できた。

この映画がアニメでなければならない必然性が、まさにこの映画を成功に導いていると思われる。アニメでなければ表現できない非現実とは、何か。レミーがねずみであって、人間であるリングイニと約束を結んで共同作業を行う、という想定である。これを実写で表現しようとしたら、たいへんなことになるだろう。人間の部分はどうにかなるとしても、やはりねずみの部分はアニメで切り抜ける必要性があったと言えよう。

それ以外に、この映画を成り立たせる可能性はなかった。その意味で、この映画はこのアニメという表現でもって、ようやく成立した特殊な映画であるのだ。

すこしわき道に逸れるが、昨日、女優のケイト・ブランシェット主演の映画『The Gift』を観ていて、Giftとはなにか、と考えていたのだ。レミーの料理の才能も、映画のなかで、Giftと表現されていた。天から与えられた生まれながらの才能をGiftと表現するということで、ようやく昨日の映画の意味も納得したしだいである。

今回の映画の標語は、「Anyone can cook」(誰でも名シェフ、と訳されていた)である。およそ、料理シェフからもっとも遠い存在である「ねずみ」を登場させて、最後に「名シェフ」にまで高めていく。一種のビルデュング小説の趣きもあって、この点でもたいへん楽しめる。

料理の場面にはそうとう気を遣っていることはわかっていたが、やはり料理に関してだけは、アニメ表現は合わないような気がする。たとえ白黒であっても、実写の料理のほうが、嗅覚・味覚・視覚の情報を、数倍観客に送るのではないかという気がする。

おいしそうな情報は確かに伝えていても、やはりそれだけの情報であって、五感を揺する映像は、実写のほうがまだ勝っていると、わたしには思われた。(最後に決定的な役割を演ずる「ラタトューユ」の絵は、主役たる料理の絵としてすこし貧弱なのではないか。)

(と書いていたら、アニメ派の娘が部屋に入ってきて、「押井守」をみてから、ものをいいなさい、と言われてしまった。そうなのだ。つまりは、アニメは食わず嫌いで、アニメ特有のリアリティがまだわかっていないという可能性はあるのだが・・・。)

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プロフィール

  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。