« 五高での講義 | トップページ | シュルレアリスムについて »

2007/08/20

放浪について

Mitchi2 朝、宿舎を出て、どこか珈琲の美味しい喫茶店で、モーニングセットを頼もうと探すが、チェーン店系のコーヒー屋さんしか見当たらない。

仕方がないので、駅の構内でちょっとトーストをかじって朝食とし、つぎの目的地へ旅立つ。旅も三日目に入ると、心なしか、自らの根無し草の本性が現れてきてしまう。帰ってから行おうと思っていた仕事の準備も忘れて、旅にどっぷりと浸りっきりになってしまう。

旅に出ると、旅先での対応によって、次の旅先が決まり、連鎖的に次から次へと、行き先が変わっていく。

このような人間の本性である冒険心や不確実性について、ロビンソン・クルーソーはつぎのように言っている。これほど的確な表現にはお目にかかったことはない。

「生涯におけるある特定の境遇を自分の独力で選びうるといわんばかりに、自らの判断力に自惚れることは、賢い人のとるべき道ではない。人間は目先のきく存在ではなく、眼前僅かの所までしか見ることをえないのである。パッションは人間の最善の友ではなく特定の感情が最悪の相談相手となることも多いのである。」

「私はこのことを、私が若い頃からもっていた、世界を放浪したいという猛烈な欲望と関連させていっているのである。この原則が厳として私の場合に働いており、結局私が罰を受けるに至ったことは、明白であった。どうしてそうなったのか、その様相や状況や結果はどうだったのか、ということを年代的に、また実に多種多様な具体的な事実をあげて説明することは容易である。(中略)用事があったかなかったかはともかく、私はとにかく出かけていったのである。今はもう、自分の行為の理由づけを、或いはこの不条理さを、これ以上くだくだ述べる時ではないと思う。とにかく、歴史的な事実に話を戻したい。私は航海に出るために船に乗り込んだ。そして、出航したのである。」(『ロビンソン・クルーソーのその後の冒険』 デフォー、平井正穂訳

「世界を放浪したいという猛烈な欲望」という言葉は、自分の人生のなかで一度は、誰にでも思い当たる言葉ではないかと思う。おそらく、近代というもののひとつの契機は、この欲求にあって、世界というものを確かめるために、世界の果てまでいって、ネットワークを逸脱した可能性を確かめたい、と人間は考えていたのだと思われる。とくに、ロビンソン・クルーソーの時代には、強い欲求としてこの欲望があったと思われる。

その昔、学生時代に教員試験を受けるために、教育実習を行っていて、女子高校へ配属になった。わたしの担当したクラスは、半分は進学志望で、もう半分は就職志望であった。このなかで、どちらにも属さないような女性たちがいて、「世界を放浪したいという猛烈な欲望」をホームルームの時間に突然述べたので、びっくりした経験がある。

横浜らしいな、と思ったのは、彼女が船乗りになりたいと言ったからである。もしほんとうに船に乗っていたら、まだまだ現役で、南太平洋あたりを今でも航海しているのだろう。

Yashinoki などと、夢現つつの状態で、宮崎に着いた。午後から、T氏の修士論文の相談を受けることになっている。彼は医療経済に関係した論文を目指しているので、宮崎大学の医学部図書館で会おうと提案したが、宿泊のホテルまで来てくれると言うので、ロビーでじっくりと話を聞く。

宮崎市内の幹線道路には、椰子の木が植わっていて、異国情緒がある。日本から飛び出て、南方にでもきたような気分にさせてくれる。

« 五高での講義 | トップページ | シュルレアリスムについて »

旅行・地域」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/173786/16215957

この記事へのトラックバック一覧です: 放浪について:

« 五高での講義 | トップページ | シュルレアリスムについて »

社会経営研究配布中

  • 2015study

社会経営ジャーナル配布中

  • 2015journal

開いている講義    「社会的協力論」

  • cooperation

「音を追究する」第13回・第14回

  • art

「多様なキャリアを考える」第2回・第3回・第4回

  • cooperation

「グローバル化と私たちの社会」第11回

  • cooperation
2017年5月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31      
無料ブログはココログ

Recommend

プロフィール

  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。