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2007/07/24

T・ベスター『築地』について

この周到で、遊び心にあふれた記述の書物、でも真に日本の経済状況を正確に踏まえた書物を、どのように呼ぶのかは、かなり重要な問題だ。

米国ハーバード大学のT・ベスター著『築地』は文化人類学の書棚に並んでいるが、わたしはこの本をぜひ経済学の書棚にも並べていただきたいと思っている。そのような書物なのだ。

築地はたしかに日本人の魚文化の中心地である。けれども、やはり魚市場の、つまりは魚の経済の中心地でもあるのだ。

築地は、食魚の文化としての、鮨や刺身の素材の集散地であることは間違いない。したがって、この本を食魚文化論として経済制度論のソトへ追いやってしまうことも可能かもしれない。けれども、見るべき人が見ればわかるように、この書物の深さと幅広さは、幾多の日本経済論を超えている。

単なる日本文化論を超えていて、このように言うことも失礼かもしれないのだが、明らかに日本の経済社会論の第一級の書物の位置を占めるに至っている。

日本の経済状況を真に描写しているものとしては、ほんとうに恐るべき本が登場したといえるのではないか。しかも築地の楽しさも忘れさせない、そんな本である。

最近、日本人ではない外国の人が日本を描く書物が、立て続けに出版されている。そのなかでも、一、二を争う日本社会論であるといっても良いと思われる。

日本の中核と思われていた場所が、世界のマージナルな場所として見直されているのだと思う。したがって、一種のウインブルドン効果の所産であるとも言えるのではないだろうか。

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プロフィール

  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。