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2007/07/15

ゼミ合宿のメリット

ゼミ合宿のメリットは、何といっても、大勢が集まるところにある。「ゼミナール効果」とでも呼びたいくらいである。

今年も恒例の、H先生を中心としたゼミ合宿が幕張のセミナーハウスで行われた。台風の影響があるにもかかわらず、入れ替わり立ち代わり、常時30人ほどの参加者が二日間にわたって、修士論文の中間報告を行った。

放送大学大学院生の特性として、論文テーマについては、学生個人が提案することになっている。なぜそれが優先されるかといえば、やはり社会人学生が多いので、職場や生活に関連したテーマが選ばれることが多いからである。

だから、それぞれ異なるテーマのゼミ生が話し合いの機会をもっても、ゼミナールのような集団指導は、無駄のように感ずるかもしれない。一般の大学のように、共通のテーマのもとにゼミナールが開かれるのとはまったく違うからだ。現に、学生たちは、参加したはじめのころには、みんな他の学生の言っていることがわからない、と言う。

ここからが、放送大学の良いところだと思うし、まだまだほんとうに理解されているわけではない点であろう。

学生が職場で経験している状況はまさに、このゼミの開始のときと同じなのだ。突然、転勤を命じられて、訳のわからない場所に配属される。けれども、体験を積むうちに次第に暗黙の学習を重ねて、その職場に溶け込んでいくのだ。

同じようにして、論文を書くという作業は、思いのほか経験がモノを言う。これまで論文を書いたことにない人にとって、その戸惑いはいかばかりであろうか。そのとき、他の学生のやり様をみて、質問をして、葛藤を乗り越えることで、自然に論文を書く方法を獲得していくのである。(じっさい、わたしもこのような経験を重ねてきたと思う。)

今日も、発表者のT氏が「成果主義とは・・・」と報告した。すると、民間の会社では・・・、独立行政法人では・・・、公共団体では・・・、とつぎつぎに、数例が報告された。これが、社会人ゼミ特有の迫力だ。

もっとも、むしろ「ゼミナール効果」は、言外の教訓という意味があって、実際に教わる以上の暗黙の技術効果を生み出しているともいえるかもしれない。上記のような直接的に情報を得ることもあるが、じっさいにはそれ以上の隠れた効果が重要なのかもしれない。

教員の側から見ると、ゼミに毎回出席した学生と、あまり出席しなかった学生とでは論文内容が異なることに、それは現れる。指導のいわば「外部的な効果」がまったく違った形で、論文に反映されるのである。

このようなゼミナールの現場は、一般の大学と比べると、あまり心地よいものではないかもしれない。質問者たちの誤解や曲解に対応しなければならないし、一生懸命考えてきたことに対して、経験的な根拠だけで、否定的に反論されれば、誰だって気分はよくないだろう。

けれども、最終目標にとって、このようなことも良い経験になるとわたしは考えている。そして、途中で心地悪いことがあっても、要はよい論文ができれば言うことはないのだ。

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プロフィール

  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。