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2007/07/19

似たもの同士の差異

似たもの同士の「差異」というものほど、厄介なものはない。

外から見れば、まったく同じに見える。ところが、本人同士は互いに、その似ているかのように見えるところでの違いということが、一番の問題だと考えている。

話し合いが行われていて、「AとBとはぜんぜん異なる」と片方の人が言ったところ、もう片方の人が「ぜんぜんということはない」と言って決裂した。

「AとBと異なる」ということは、二人にとって共通なのだが、「ぜんぜん」なのかそうでないのかが、決定的に違うのだそうだ。

もっとも、このことで現状認識が異なるということで済めば、その後の議論には影響を与えない。ところが、人間は感情を持つ動物なので、「ぜんぜん」かそうでないか、ということは、いくらでも膨張させて、問題とすることができる。

たとえば、これを「ぜんぜん」と考えるとは、認識の仕方がおかしい、と問題にすることができるし、「ぜんぜん」という副詞を使う神経が不自然だ、とも言うことができるのだ。互いに、不快なことをわざと作りだす、悪の循環に入っていく場面である。

つまりは、言い合いの種は無限に存在することになる。最後には、道を歩いていて、向こうから人が来るのに、わざとぶつかって行くような事態になる。こうなると事態は悪いほうへ悪いほうへと流れていって、本人たちではどうしようもない状況に嵌まり込んでしまう。

小学校時代には、よくこのような問題が生じた。わたしの通っていた小学校の生徒会で、学校のウサギ小屋を作って、誰かが面倒をみようということになった。ここまでは全員一致で決まったのだが、さて誰がどのように世話をするのかを廻っては、みんな自分がやりたくて立候補して、なかなか決着はつかなかった。

その後、先生方の職員会議でこのことが話題になったらしいのだが、遠くから聞こえてきたのは、先生方の中でも意見が割れて、決定的な対立にまで発展してしまったらしい。

わたしたちは差異を乗り越えるために、話し合いという技術を開発してきたはずだが、話し合いがかえって差異を際立たせる場になることが多いのだ。先日観ていたアニメ映画で上記のようなことが起こっていて、昔の状況を思い出したしだいである。

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日常生活の関係」カテゴリの記事

コメント

暑中お見舞い申し上げます。
ご無沙汰しております。坂井ゼミナールにてお世話になった伊喜です。
先生のブログは時々拝見しております。

 ところで先日、ウガンダの方からお話を聞く機会がありました。内戦に巻き込まれて、地雷を踏んで片足を失くしたという女性です。

先生のこの記事からはかなり飛躍するかもしれませんが、ウガンダでは、伝統的に培われてきた「ラ・チャ・チャ」という今日的な用語でいえば和解システムがあるそうで、それが和平プロセスには重要な役割を果たすそうです。

坂井ゼミにおいて私の選んだテーマ「制度の形成」について、あらためて考えさせられる話の内容でした。

伊喜様

久しぶりですね。

「ラ・チャ・チャ」というのは、面白そうですね。このようなシステムがありながら、内戦が内戦を呼ぶ事態になったのはなぜでしょうか。

やはり、人間の作り出した習慣や慣習では、乗り越えることのできない問題が存在するということでしょうか。

たとえ部分的なものであっても、この「ラ・チャ・チャ」のような人間の力を信じることのできるシステムが応用できれば、良い方向が当時見出せたと思うのですが・・・。

また伊喜さんの制度論を聞きたいな、と思います。
お元気で暑い夏を乗り切ってください。

坂井素思

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プロフィール

  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。