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2007/06/01

「タイの染織」

Docu2_1 酒井豊子先生(放送大学名誉教授)から、素敵な翻訳書が送られてきた。

『タイの染織』S.コンウェイ著(めこん社刊)である。放送大学生活文化研究会の方がたと一緒に訳されたものだ。タイの染めと織物について、詳細な写真を盛り込んで、デザインと技術を克明に報告している。

タイは、タイシルクや木綿の染織が発達した国であることは有名である。この本は各地方の模様の特徴を精緻に捉えている点で貴重な書だと思う。奥付からみると、大英博物館の研究シリーズらしい。

じつはわたしが初めて海外に出た先が、タイであった。大学院生のときに、バンコクから入って、タイ国内を回って歩いたのだが、もっとも印象的だったのが、チェンマイである。夜になって、チェンマイの市場に出かけると、そこに練習として織られたり刺繍されたりした布切れがたくさん並んでいて、どの一枚を採っても綺麗だった。

とくに、黒を色調とした、北の民族のものだと言われた布には、特徴があった。この書物のなかにも、パーシンという女性の腰衣が数多く取り上げられ、地域ごとに特徴ある模様を紹介している。

きっと地方ごとに特色のある模様を編み出すことには、そしてとくに、女性の衣装として作られたことには、人間の交流上の差し迫った必要性が元来あったのだと推測できる。

バンコクでよく見る金銀の絹でできた宮廷衣装も綺麗だが、ほんとうのことを言うと、地味な黒の縞模様の民族衣装のほうがもっと素敵だ。そこには、人間の時間が織り込まれているように思えてくる。観ていてほんとうに落ち着くのだ。その土地に定着した模様は、その土地の趣味連関、つまりは人間関係を織り込んでいるのではないだろうか。そして、外から来た異なる地域の人びとを魅了し、そこに交流が始まるのだ。

翻訳に当たった「放送大学生活文化研究会」は、1986年に設立されているから、放送大学のなかでもかなり古い研究会である。この翻訳が始まったのが1992年ごろで、翻訳が終了したのが2004年だとあとがきに記されている。それがようやく出版されたのだ。研究会の方がたの努力が織り込まれている著書といえよう。出版おめでとうございます。

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プロフィール

  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。