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2007/06/28

銀座での研究会

研究会のことを書くことは、連続して出席しているほかの人へ影響を与えてしまい、その次の回からの発言に微妙な作用を及ぼしてしまう恐れがあるので、ふつうは好ましいことではない。ほかの研究会については、なるべく秘密にしておくことにしている。

けれども、今回発表を求められた研究会は、最初で最後の出席になるものなので、上記の心配はない。それに主催者も、出席者も、抱えているテーマも、そしてコメントもたいへん素晴らしい会だったので、ぜひ記憶に止めておきたいと考えた次第である。

以前に、銀座の交詢社ビルでの会合を紹介したが、それよりもさらに銀座の真ん中で、今回の研究会の会合が持たれた。それは、三越と松屋の斜向かいの本屋さんKビルの3階で開催された。

この並びには、御木本パールの本拠地ビルもある。御木本は「ラスキン文庫」のスポンサーとしても有名で、銀座と研究会との結びつきは以前から存在していたといってよい。

東京のどこからでも出て来やすいところにあるのが銀座なのだから、研究会の地の利としては申し分ないのは言うまでもない。研究会の場所は、内容と同等なくらい重要なポイントである。

あとで伺ったところでは、この研究会の行われた部屋は、もう亡くなってしまったが、かつて医師会の会長で名を馳せたT氏の診療所跡という、由緒ある場所だとのことだ。アールデコ風の壁面や天井のデザインが残る、文化の香りが漂ってくるビルであった。

以上のように、場所が良いというのは、研究会の第一条件である。第二の条件として、その会が議論の幅に寛容であることが必要である。発表者の言うことをじっくり聴いてくれることが大事だ。もっとも、あまりにじっくり聴かれすぎるとわかっているのかどうか不安になってくるのだが。わたしの悪いくせは、そのようなときにはこちらから質問してしまうことである。とくに、今回の研究会のように、議論を広げたいときに、すこし文脈をはずしてもついてきてくれる許容性がある研究会は素晴らしい。

第三には、このように外からの異なる分野の発表者が招かれる研究会では、当然バックグランドの違いがあるため、そう簡単には理解されるわけではない。この場合には、方法の違いを含んだ異なる意見の存在を許容する余裕のある態度が必要となる。この点でも、どこまでできたかはわからないが、今回の会ではこれらを乗り超えようとする意欲が勝っていたと思われる。

第四には、根本的なことだが、研究会形式の意見のやり取りを好ましいと考える人が参加しているかいなかは決定的に重要である。前提すら異なる議論に加わるわけだから、当然怖いもの見たさの感情や好奇心が支配していると見てよいだろう。したがって、多少常軌を逸した議論の組み立てでも、最後に何とか収まりが着くのであれば、それはそれで好奇心を優位において、議論それ自体を楽しもうとする意思が認められている必要がある。

以上、いずれもたいへん難しい条件なのだが、今回の研究会ではきわめて慎重にかつ周り廻りながら、これらを乗り越える努力をしたのだ。このような努力を毎回おこなっているこの研究会は稀有の存在であるといえよう。今後の発展を祈り、メンバーの寛容さに感謝いたしたい。

家に帰ってビールを飲んでいたら、日本映画の「ジョゼと虎と魚たち」をテレビで放映していた。女優の池脇千鶴演じる主人公が、「好きな男ができたら、一緒に怖いもの(虎)を見ると決めていた」というシーンがあって、面白いなと思った。もっとも、さすがにこんな虎を見るような「研究会」は生涯に一度しかないかもしれないが、「魚たち」をみるくらいの研究会は数多く参加したいと思った。この「商売」していて良かったな、と思えるのも、このような研究会がときどきあるからだ。

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プロフィール

  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。