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2007/06/22

生涯学習とはなにか

Learning放送大学のK先生とI先生共著の『大人のための「学問のススメ」』講談社現代新書をいただいた。前回、K先生がやはり現代新書を出版なさったときに、いただく前に、読みました、と言って、感想を述べさせてもらったら、結局その本をいただけなかった。(根に持っているわけではないが、)今回はいただいてから、感想を述べることにしたしだいである。

生涯学習とはなにか、と正面切って取り上げている本は少ないと思う。もちろん、Adult Learningなどの専門書は数限りなくあるが、それが現代日本の一般の成人、社会人にとって、どのような意味があるのか、については論議となることは少なかった。改めて、このことを提起している点で時宜を得た素晴らしい企画だと思う。

とくに、「生涯学習の醍醐味は、結晶作用」という二人の先生の意見に、全面的に賛成する。つまり、ここが放送大学と他の大学と一番異なるところでもある。「物事を言語的に理解し、経験を評価してその成果を利用し、自分の周囲の環境から適切な情報を引き出す能力」が、生涯学習の大学では大切なのだ。

放送大学の学生の方々を見ていると、自分の人生でこれまで獲得し蓄積されてきた知識と、大学での学問とをうまく融合させて学習している人が、自分の勉強を最後には成就させてきている。

最近、生活と福祉専攻のN先生の話を伺っていたら、放送大学は、「知識循環のプラットホーム」だとおっしゃっていた。社会人の方がたには、それぞれの人生で獲得してきた実践の知識が蓄積されてきているのだが、その方がたがそれ以上に知識を得たいと思ったときに、その実践知をさらに伸ばす工夫が必要となる。このときに、知識交流の共通基盤として、放送大学の役割があるのだとおっしゃる。

またもちろん、逆に大学で得た知識を、実践の場で確かめ、活用することもできるし、「プラットホーム」としての大学では、これらを混交できるのだ。

4月から始まったわたしの講義「経済社会の考え方」の第一章(第1回)で、大人と子どもの経済認識の違いについてから話を始めている。経済学は経験科学だといわれているが、やはり実社会で経済取引を行ったり、財産管理を行ったりした人と、そのようなことをまったく行ったことの無い人とでは、経済という考え方が違ってくる。

生涯学習の大学では、むしろこのような経験知を得ている人が、多く大学に来ているのであり、そのことを大学は積極的に評価すべきだと思われる。そのことが、生涯学習という、極めて多様な学問のあり方に、新しい風を呼び込むのではないだろうか。

この本のなかで、後半には、従来からの企業内教育やリカレント教育にかわって、退職準備教育などの「キャリア教育」や、社会人の自己啓発としての「産学協同学習プログラム」の提案が行われていて、この点でも示唆に富んだものになっている。

放送大学の学生、生涯学習を考える方がたに必読の本になっていると思う。それから、この本を読めば、K先生とI先生がこれまでどのような人生を辿ってきているのかも、垣間見られることも付け加えておきたい。(I先生がそんなに怒りっぽい性格なのだ、とは知りませんでした・・・。某教授の「主婦」発言に、K先生がご立腹なさっていたことも、初めて知りました。)

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プロフィール

  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。