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2007/05/19

大正から昭和にかけての時代

泉屋博古館から帰ってきてから、1910年代から1920年代にかけて、日本はどのような文化状況にあったのか、観ておく必要があると感じていた。

ちょうど東京の山種美術館で、近代以後の日本画の展覧会が行われていて、参考になると思って出かけた。もちろん、現代の東山魁夷、横山操、加山又造なども展示されていたが、大正期から昭和初期の日ごろまとまってみることのないものを多く観ることができた。わたしのような素人にもすごいなと思わせる、竹内栖鳳、上村松園、速水御舟などの近代日本画を一堂のもとに観る機会を得た。

西洋近代を一度くぐり抜けた日本画が、どのようにして復活して、大正期にとりわけ盛んな時期を迎えたのか、という点は極めて興味深い点である。在り様について、時間を追って観る事ができた。その特徴のひとつは、根拠はあまりないが、直感的には西洋絵画の明晰さに加えて、日本の「繊細さ」ということではないかと推察したしだいである。

この点での典型例は、時代がすこし下るが、鏑木清方「伽羅」だと思う。横になった娘が、ゆったりとした仕草で、布団の上に起きていて、これも近代の一場面を描いているのだろうが、時間がそこだけ止まっているのだった。

Img_1675a そのようにみると、この美術館の近く、日曜日の千代田区三番町近辺も、近代的な佇まいでありながら、時間の止まっている街だな。

静かなマンションとお屋敷が交差するビルの一階に、UCCの店があったので、久しぶりにジャマイカ豆のコーヒーを注文する。午前に、学習センターでプリントしてきた論文を取り出し、日常を取り返そうと試みる。Img_1676a

今日はさらに、下宿をして出ている娘が、久しぶりに帰ってくるというので、渋谷で待ち合わせて、「モディリアーニと妻ジャンヌの物語展」を観ることにした。連チャンで歩き回るのは、老体にはきついが、それにもまして、モディリアーニの誘惑は強い。

http://www.bunkamura.co.jp/shokai/museum/lineup/07_modigliani/index.html

そういえば、モディリアーニが亡くなったのも1920年であり、晩年の作品が今回数多く来ている。ということは、この展覧会も、大正から昭和へという時期にあたっている。偶然の一致だけれど。

帰りに話題になったのは、誰でも疑問に思うことであった。つまり、なぜモディリアーニの描く人物の目には、瞳が描かれないのか、という点である。

三つくらいの理由があると思われる。パンフレットなどには、(1)彫刻家出身で、瞳は描かないため、(2)鑑賞する人に想像力を書き立てさせるため、などの理由が載っていた。またおそらく、病的な状態からの影響もあったのではないかと想像させられる。

問題は(2)の想像力の問題だと思われる。なぜ瞳を描かないと想像力が動員されるのか、という点だと思う。瞳を書き入れると、表情が確定してしまうということはあると思われる。

モディリアーニを評するもののなかには、「どこを見ているのかわからない空っぽな目」という解釈があったが、これは違うのでないかと思う。むしろ、複数の目を意識していたからこそ、ひとつの目を描き入れることを拒否したのではないだろうか。

モディリアーニはしばしば、同じポーズのモデルを何回も描写したと伝えられている。同じ場面が複数の意味を持つ、というキュビズムの影響は確実に現れている。同じ絵が、あるときは泣いているように見え、あるときは笑っているように見える。Img_1684a

空虚を描いたのではなく、むしろ複数の目を同時に描いたのではないだろうか。

最後に寄ろうとした喫茶店は、改装中で店のなかはがらんとしていた。今日最後のコーヒーはお預け。

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プロフィール

  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。