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2007/05/17

京都日帰り

日帰りで、京大で催された「情報通信政策研究会」に出席してきた。

若手研究者たちの発表も面白かったが、H先生の次から次へ捌いていく手際のよさに見とれてしまった。つい、発言する機会を見逃してしまうこともあった。また、辛口のK先生とI先生の発言で、会全体も引き締まった。Wさん、Aさんの準備の良さが研究会の要になっていると感じたしだいである。

出席しての感想だが、どうも情報通信分野は、「秩序だった混沌」の時代に入ったと思わざるをえない。秩序だっている点では、情報通信産業分野でいわゆる「レイヤー別産業構造」を形成している点で、共通認識が存在する。けれども、いざ将来の問題となると、レイヤー間の分離・統合関係や、他の産業との連関など極めて流動的で「混沌」として不確実である、ということも共通認識となっている。

この混沌をいかに超えるか楽しみである、というくらいの楽観主義で臨みたいと思う。ところで、レイヤーというのは、産業構造の考え方で、コンテンツやアプリ、サービスやインフラなどのインターネット産業特有の機能構造を指している。この産業では、それぞれコンテンツ産業、アプリ産業、サービス産業、インフラ産業が成り立っていて、相互作用を及ぼし合っている。(手軽にこの辺を知りたい方は、また放送大学の宣伝めいてしまうが、放送大学テキスト『ネットワーク産業論』第5章P.126あるいは『光電子技術とIT社会』第13章P194あたりをご参照願いたい。)

発言しながら思い出したのは、日本の電話産業創生期を描いた絵を撮った一枚の写真である。H先生と昨年作成した『情報と社会』のなかで逓信博物館を取材して使ったのだが、電話局の近くの電信柱に電話線が張られている様子を描いている。この写真が、わたしの「情報のイメージ」の原型になっている。

電信柱に夥しいほどの電話線が鈴なりに取り付けられているのである。秋田の竿灯のちょうちんのように、碍子が取り付けられていて、そこに電話線が通っていて、いまにも倒れんばかりのすごい本数が通っている。

なぜそうなったのかといえば、創生期の電話線はいまの光ケーブルのように、一本の線で複数の回線を結ぶことができず、電話局とすべての一般家庭とは同数の回線で繋がっていたのである。

もしそれが今日まで続いていたら、どうなっていたか、このことを想像するだけで楽しくなってくる。けれども、笑い話ではなく、当初はケーブルという発想はなかったはずなので、当事者は本気で、加入者全員をそれぞれ一本ずつ結ぼうと考えていたに違いないのだ。

つまり、電話線で結ぼうという「秩序」は見えていたが、全部つないだらどうなるのかという点では「混沌」であったと言えよう。電信柱が折れる前に、次の技術が開発されて良かったといえよう。

あるいは、もし開発されなければ、もっと前に地下へ埋めるという発想が育っていて、今日の空を覆う混沌は回避されていたかもしれない。こう考えると、何が幸か不幸か実際のところはわからなくなってくる。

ところで、せっかく京都に来て、ひとつの仕事をこなすだけではもったいない。午前中の空いた時間を利用して、東山にある住友財団の「泉屋博古館」を訪れた。お恥ずかしいことに、最近まで「イズミヤ」と読んでいて、ようやく「センオク」であることを知ったのだ。

前に別子銅山へ取材で行ったときに、ここに資料がまとめられていると聞いていて機会があれば訪れたいと思っていた。けれども、常設の展示物としては行われていないようであった。今日の企画展は板谷波山を中心とした「日本の近代陶芸」であった。

http://www.sen-oku.or.jp/kyoto/program/index.html

波山については、千葉学習センターの研修旅行で、笠間の陶芸美術館を観たときに印象に残っていた。葆光彩磁の上品で柔らかい作品が有名で、今回もこの博古館所蔵の「珍果文花瓶」が見られるというので、午前中にもかかわらず少なくない入場者だった。

収穫だったのは、白磁の香炉と、八つ手葉の彫刻花瓶、そして、双魚文皿であった。冷たい白さを抑えた乳白色の白さ、茶色の力強さ、素朴なデザインなど、日本が西洋文明からすこし抜け出し、独自の近代性を導入した時期の特徴を表していると思った。Img_1657b

大正期の消費文化について、また取材すべき題材が増えた、という感想である。帰りに、恒例となった感があるが、「イノダ」のコロンビア豆を買って新幹線に飛び乗った。

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  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。