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2007/05/02

バベル

神奈川県立図書館の川崎分館には、「社史」が豊富に揃っていて、よく利用する。検索してからいったので、4冊の本はすぐに見つかった。帰りには、バスに乗って、川崎駅に出なければならない。

時間を見計らっていて、足は自然とシネコンへ向かうことになる。映画「バベル」は、社会の分断現象を観察しているものなので、研究対象としてはずすことはできない。期待して観た。

結論からすれば、(映画のひとつの規準だと勝手にわたしが考えているのだが、)「昇華」の程度が足りないというのが感想である。

聖書のバベル物語では、人間が天に到達しようとして塔を建て、神を恐れぬ所業の結果として、神の怒りに触れて断罪され、異なる言葉を持つ民族へ分割される。

これに対して、今回の映画では、4つの家族がそれぞれの世界に存在していて、相互に見えない形で細い繋がりを持っている。ところが、事件がつぎつぎに起こって、最後は分断されて、孤立した家族だけが残される、という物語として描かれている。

それはそうなのだが、それでは当たり前過ぎるのではないだろうか。観てみたかったのは、バベル状況に在っても、バラバラにされた家族が細々と遠くのものと結びついている、という可能性である。このほうが意外性があり、よっぽど映画的ではないだろうか。

ちょっと辛口にいうならば、世界がバラバラなのに、家族だけが最後に結びつきを強固にする、というかなり家族主義的な結末になっていて、今日の世界を把握しそこなっているのではないかと思われた。

じつは、今日の午前中、以前ここでも紹介した79歳で博士号をとったKさんと会っていたのだ。学位授与の新聞記事で、反響がいくつかあったそうである。ご本人はちょっと違うんだがな、と言いつつ、「Kさんは同世代女性の亀鑑です」という葉書をいただいたとのことだ。

女学校を出ても、大学へ行く女性は少なく、男性との差別を感ずる世代であり、論文を実際に書くことができることを示したことでは、やはり満足しているそうである。このことでは、社会的貢献を行ったのではないだろうか。

K大学の宣伝に貢献するのは、あまりいい気持ちはしないが、実際にお世話になったので、感謝を行うという意味はあったとのことだ。

映画「バベル」のようにバラバラな世界のなかにあっても、Kさんのように論文を書くことで、あちこちの分散している知識を、一気に集めたことは重要だと思う。このことはほんとうに意味のあることだと思う。

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プロフィール

  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。