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2007/02/24

最終段階の校正

今日は一日、『経済社会の考え方』の校正のために空けておいた。

朝から、再校へ赤を入れ始める。文章の冗長さが気になるが、あまり削ってしまっても説明不足になってしまう。自分では、すでに説明してあったと思い込んでいて、初出の考え方にまったく説明なしに入ってしまうことがよくあり、編集者の方に注意される。

今回の編集者のYさんと、渋谷にあるNHK出版で待ち合わせていたので、早昼を食べて、東横線に乗る。日吉に住んでいたときには、渋谷へ出るのはまったく苦にならなかったが、横浜から先へ越してから、やはり渋谷への足は遠のくようになった。

センター街から宇田川町を抜けていくときには、なるべく早足で、わき目を振らずに歩くことに決めている。それでなくとも、いつも新奇性にさらされていて、目を置くところがふつうの10倍くらいあるため、通過するだけで疲れてしまうのだ。歳をとったということだ。

ようやく東急ハンズを過ぎる辺りで、宇田川町の裏道に入って、落ち着くのである。NHK出版の編集室はビルの6階にあって、オフィスの窓から渋谷のビル群が見える。

けれども、今日は土曜日なので、窓の内側のオフィスは、担当のYさんが一人だけだ。通常、20人ぐらいいる事務所も、閑散として、窓に当たる風がひゅうひゅうと聞こえるだけだった。

校正でいつも驚くのは、何度見直しても、必ず修正箇所が見つかるということである。自分では、意味や文脈を読んでしまうので、肝心の文字の誤りを見逃してしまうのだ。

そして、これも不思議なことに、他者のほうが校正の成果があがるということがある。単なるインクの染みとして、見ていったほうがよいのだ。(自分で書いたものだという意識は、校正段階で捨てるべきだということかもしれない。)

以前ここでも紹介したN出版の裏にある「Tabela」の濃いコーヒーを飲んでから、次のところへ移動しようとしたところ、残念ながらパーティ予約が入っていて閉じていた。すこし距離があるところだが、30年ほど前に入り浸っていたことのある道玄坂の「カフェ・ド・アン」(前は違う名前だったが)で休憩。ここは、シフォン・ケーキが美味しい。

Yさんが編集を担当した足立倫行著『親と離れて「ひと」となる』をいただいたので、読み始める。すでに、70年代、80年代から、不登校やニート問題に取り組んでいた人びとのドキュメントだ。登場人物は、みんな個性的で、熱情にあふれている。このような人びとが真剣に取り組んできていても、日本社会全体の中ではほんの一部でしかなく、数十年経っても、うまくいかなかったのがこの問題の奥深いところなのだ。

わたしたちがこの「カフェ・ド・アン」で、30年前にひきこもって、就職せずに議論ばかりしていたころに、ちょうどこの問題が、日本社会全体に広がりつつあったのだ。わたしたちは、かれらの「走り」だということになる。

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プロフィール

  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。