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2007/01/28

次善の「親密な関係」

2月のはじめに、大阪でゼミ合宿が行われる。東京駅の旅行代理店でこの切符を取ったら、店のリニューアル記念なので抽選を引いてくださいといわれた。どうせティッシュくらいしか当たらないだろうと一番上にあったくじを差し出すと、3等ですと言われた。

係りの女性が、新幹線の模型と、CDとどちらが良いかと尋ねるので、CDのほうをもらってきた。「トーキョー☆サウンド☆ブックマーク」と名づけられた、特別編集版だった。ところが、内容がすべて女性歌手の曲で、声がうるさく聞こえてしまい、世間ではかなりヒットした曲が集められているらしいが、最初の印象ではあまり聞きたいとも思わなかった。

ところが、二度目に聞くと、いくつかの曲が耳に残っていて、なかなか良いと思い始めた。何が良いのかというと、詞のいくつかの断片に、女性特有の素敵な響きがあることに気づいたのだ。

たとえば、9曲目に入っている「Secret Base~君がくれたもの/ZONE」では、

「君と夏の終わり 将来の夢 大きな夢 忘れない
10年後の8月 また出会えるのを 信じて
最高の思い出を」

という詞があり、将来 10年後 出会い という時間的な「距離」が読み込まれており、現在の自分を将来へ向かって拡大してくれている。4,5分の旅を十分楽しませてくれた。

CDの2曲目にも、同じ趣向の言葉が入っている曲がある。「Slow Train/川村結花」の冒頭の詞で、つぎの言葉から始まる。

「遠く遠くどこまでも ゆっくりゆられて行こう
 かなしい歌は似合わない 僕らはきっとまた会える」

同様に、距離感が素敵なのだ。いずれも、女性に男性の心を歌わせていて、成功している。つまり、現代の男の心情を如実に映し出しており、このことで曲としては男性を意識する女性性が表に現れていると思われる。

ここまでは、おそらくこれらの曲が世間で流行った段階で、みんなが感じたことであり、誰かがどこかで言っているにちがいないと思われる。それほど、これら曲の言葉は現代に浸透する力を持っている。

これらの曲から離れて、すこし考えてみると、このように感じた女性性とはなにか、ということが気になった。

女性歌手には、「艶かしさ」つまりコケットリーが重要だと思う。艶かしさと書くと、ちょっと違うといわれそうだが、上記の距離感がおそらく現代版の「艶かしさ」なのだ。正直に言ってしまうと、この歳になって、ようやくわかってきたことは、女性のコケットリーということだ。

人間は親密な関係というのは、それほど多く結ぶことはできない。わたしも親密な関係と呼べるのは妻との関係だけで、それだけでも手一杯だ。(娘や母親まで入れるとしても、これ以上だとパンク状態だ。)カサノバが神格である理由は、おそらくたくさんの親密な関係を結ぶことができたことから来るのだと思われる。ふつうは、たくさんの親密な関係というのは語義矛盾で、ありえないことなのだ。

そこで、社会学者のジンメルがいうように、親密な世界からすこし逸脱した、次善の親密な世界を作り出すことになる。それがコケットリーの関係だと思われる。

つまり、親密な絶対の関係性を延長すれば、世界全体が親密な関係になるだろう、というのは、あきらかに関係性を誤解している。

女性性に二種類があることは、有名である。母か娼婦かという二分法であるが、これはかなり以前の分類で、今日では当てはまらない。そこで、親密な関係の女性性と、次善の親密な関係の女性性という分類を推奨したい。

ここで重要なのは、親密な関係と、次善との間には、絶対的な距離が存在するということである。このことがわかれば、コケテッシュなCDの世界を満喫できること請け合いだ。

CDの7曲目に「夏祭り/Whiteberry」が入っていて、

 「君が居た夏は
 遠い夢の中
 空に消えていった
 打ち上げ花火」

という関係を歌っている。

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プロフィール

  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。