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2007/01/14

オーラルヒストリー

Iさんの修士論文をA先生から紹介されて読む機会を得た。トマス・ブレークモアという戦後日本で活躍した弁護士について、オーラルヒストリーの手法を用いて書いた論文である。彼を知っている人びとにインタヴュー調査を行い、彼の生涯を再構成している。

ブレークモアがなぜ注目されるのかといえば、多元的な活躍を戦後日本で行ったからである。GHQで働いた後、外国人が日本へ進出するときにサポートする商業弁護士として活躍する。その活動と同時に、財団法人の国際文化会館の設立や運営にかかわったり、あきる野市にある釣り場を開設したりして、日本に対して独自の貢献を残している。

まず面白かったのは、真面目に遊んでいる、という彼の性格である。とくにそれが発揮されているのが、釣り場の創設である。フライフィッシングを早い時期に日本に紹介したことでも、十分貢献していると思われるが、それ以上に、フライフィッシングの釣り場まで用意するというのは、到底遊び半分ではできないことだ。資金の用意から、実際にフィッシングを楽しむところまで、着実に作業をこなしていて、頼もしい限りである。

論文を書いたIさんの努力に、敬意を払いたい。オーラルヒストリーというのは、90%以上労力の学問なのだ。今回も取材のテープ起こしから、再構成の論文作成まで、すべてひとりで行ったそうである。テープから本文を作成するまでには、話の内容の裏を取ったり、ストーリーを時系列に並べなおしたり、文体を統一したり、などたいへんな作業の集積が必要なのである。

いつまで経っても、作業は終わらない、というのが本音だろうと推測された。今回もまだまだ、課題があるとおっしゃっていた。今後の充実が楽しみだ。また、進んだら読ませていただこうと思う。Photo_11

帰りの途中、東京駅の丸善によって、この論文の参考文献に載っていたR.ホワイティング『東京ワンダーランド』とその続編である『東京アウトサイダーズ』を購入し、横浜までの電車のなかで、戦後日本の不思議な世界を垣間見させていただいた。おそらく、この本も、オーラルヒストリーの手法に近い方法をとっているものと思われる。文献にとらわれない、活き活きとした文体が興味深かった。(写真は、丸善側から見たレンガ造りの東京駅)

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