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2006/11/17

「企業内学校」の衰退と新たな動き

企業内学校の閉校が続いている、という記事が10月下旬の新聞に載っていた。東京電力が運営する「東電学園」の記事だった。

見逃すことができないのは、これが社員養成、技能養成のために設立された学校であるにもかかわらず、実際には一般教養も教えていて、通信制の高校卒業ができた、という点である。

つまり、職業訓練と教養とが同時に教えられていたのである。このような企業内学校が減少することは、単に企業内の技能訓練に影響を与えるばかりでなく、社会一般の教養教育の衰退をも意味することになる。もちろん、技能の点では、企業が職場で教えれば、それで済むことかもしれないが、教養については職場教育で済ますわけにはいかないだろう。

じつは、今日東京の代々木にある、高級暖房機製造の企業に呼ばれて、経済学入門を1時間半たっぷり講義させてもらった。夕方、暗くなって仕事を片付け、仕事場のあるほかのビルから、三々五々社員の方々が集まってきた。

倉庫だったところを改造したとおっしゃっていたが、コミュニティセンター顔負けの広いスペースに、ゆったりとした授業用の椅子が配置されていて、真ん中にスクリーンが設けられている。

仕事に直接関係あるとは思えない講座を開こうということさえ、今の時代では珍しいのに、さらに仕事の終わった社員たちが、進んで集まって話を聴こうという心性を持っているのは稀有だといえる。このことだけでも、余裕のある会社だな、と思ってしまった。

講義が始まるまで相手をしてくださった会社の代表の方は、たいへんコミュニケーション能力の豊かな方だったが、奥さんは英国のOU(公開大学)ご出身だとのこと。会社の持つ総合的な潜在力が大事だ、ということを理解している方だとお見受けした。

とくに、女性の参加が多かったのは驚きである。質問に対する受け応えも、たいへん好ましいものを感じた。この時代、企業文化恐るべし、といっておきたい。

もしこのような動きが続くなら、「夜の講義シリーズ」と銘打って、番外編を企画するのもおもしろいな、と代々木公園に面した喫茶店で、一服しながら夢想した次第である。

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プロフィール

  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。