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2006/11/11

仕事と趣味

晩秋の気持ちよく晴れた日だった。窓から、すこし涼しい、快適な風が教室に流れ込んでくる。

大学院生と神奈川学習センターで、ゼミナールを開いた。気候が良いせいか、議論していても、時間のたつのを忘れてしまうほどだ。

京都から来ているNさんは、新幹線に乗らなければならないので、すぐに帰ったが、ゼミ終了後ほかの方と近くの喫茶店へいく。

放送大学の大学院生の多くは、社会人なので、仕事と勉強とで手一杯という学生が多いなか、Fさんは拳法も4段とのこと。けんかのやり方など、話題に事欠かない。たいへん頼もしいかぎりである。

わたしの場合には、仕事柄、仕事と趣味の区別はなかなかつかない。本を楽しんで読んでいても、趣味で読んでいるわけではないし、かといって、仕事だというには気が引ける場合がある。けれども、後になって、仕事に役立つことはあって、とくにコーヒーの話はあとで論文に盛り込まれることが多い。

となると、わたしにとっては、論文を書くことも、仕事ではなく、趣味なのかもしれない。

Fさんの拳法はどちらに属するのだろうか。聞くのを忘れてしまったのは残念だが、将来道場を開いて、本業になる可能性もあるだろう。趣味も、段階を重ねていくと、仕事と見分けがつかないような段階があるのだと思う。

「極致」とか、「悟り」とか、あるんですかと聞いてみた。いっぺんに「鉛」が「金」に変わるような大変化としての極致というものはないそうだ。けれども、このあとの言葉が素敵だと思ったが、「鉛に金箔を一枚一枚貼っていくことは可能なんです」とおっしゃる。

金箔じゃなかなか大きくならないじゃないですか、というと、そのほうが良いのです、緻密に貼っていって、何万枚か重ねたときに意味が出るんです、と。あとで縦に切ったときに、鉛よりも金が多く含まれていれば、本物に近づいたということなのだと。

おそらく拳法で培ってきた経験的な話であろうが、自分の仕事もこの流儀でこなしてきたのだと思われる。放送大学生の持っている経験主義の好例だと思う。来年の論文成就が楽しみだ、というのは蛇足だったかもしれない。

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コメント

とても魅力的な記事でした!!
また遊びに来ます!!
ありがとうございます。。

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プロフィール

  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。