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2006/10/19

映画「カポーティ」と取材の方法

映画「カポーティ」をどの視点で見るかは問題だと思われるが、わたしは「取材」という視点に興味を持った。

この映画のなかで、カポーティはかなり積極的な取材方法を採った、ということになっている。そのことを暗喩させる場面がある。

彼が「冷血」のモデルとなった事件を取材するために、カンザス行きの汽車に乗り込む。そこには、幼なじみで、後に小説家になったネル・ハーパー・リーが取材助手として先に乗り込んでいる。そこへ、ドアボーイが荷物を運んできて、「乗車ありがとうございます。本を読みました。あの傑作は・・・」とカポーティの著作をほめる。ネルは、直ちに、カポーティがドアボーイに金を握らせたことを見破る。かれは状況を楽しんで、笑っている。

カポーティという小説家は、つねに状況への働きかけを重視する。他者に対して積極的にアプローチして、状況を自分で書き換えようとしそれを可能にする才能があった人として描かれている。取材とはこのようにやるものだ、という見本を見せつけてくれる。

もっとも、この状況への働きかけの後が重要なのだ。最終的な真実は、カポーティの変えようとした現実がそのままカポーティへしっぺ返しを行い、かえってその運命に彼自身が翻弄される。自分の操作が現実からの操作によって、ひっくり返されるのだ。取材は、取材した結果の復讐を受ける。

最初は、世界を相手に操作する側にいたはずが、最終的には操作される身となって、身動きができなくなってしまう。もっとも前半だけを描いても、カポーティのけれん味が遺憾なく発揮されていることがわかるが、後半になって、ほんとうの真実が現れる奥深さが描かれている。取材によって描かれるような、ほんとうの真実などというものはあり得ないとしても、あたかもあるかのように描いているところが、この映画の魅力になっていると思う。

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プロフィール

  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。