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2006/09/04

「お金の世界」と「情けの世界」

溝口健二脚本、吉村公三郎監督「大阪物語」をBSで見た。お金の物語だ。

「お金の世界」は、貧乏生活の「質素・倹約」に始まる。農村で年貢の取り立てに困って、大阪に出る。そこで、米を拾って、飲まず食わずの生活から、銭の世界が開ける。

すこし損得勘定がうまくなると、虚栄の誘惑に染まる。大きな店を構えることになるが、損得と信用とは隣り合わせであることは、主人公の近江屋は知っている。

その世界から、「けち・吝嗇」の泥沼にはまっていく。したがって、大名貸しをして権力へすり寄ることからは、うまく逃れる。「情け」と「損得勘定」の板挟みからも、すり抜ける。

似たもの同士の出会いで、鐙屋の女将は息子への「情け」で人間に止まるが、他方けちから女房を無くし、子供達からの信認も失った、「情け」を無くした近江屋は「損得」どころか、人間の世界にもいられなくなって発狂してしまう。

「お金の世界」と「情けの世界」を秤にかけると、どちらが重いのかという物語である。なぜお金を貯めるのか、という根本的な問がここには存在する。

もちろん、「情けの世界」が無ければ、「お金の世界」も成り立たないのだ、というメッセージはあり得るとしても、やはりお金の普遍的なダイナミックスも読み込まれて当然だと思われる。

お金というモノが、信用で創られているところからして、ひとりの人の蔵のなかにだけ、仕舞い込まれてしまっているという状態は、社会的には、たぶん許されないことなのだ。

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  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。