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2006/08/04

登山客の転換

N県O市へ家族と一緒に来ている。明日からの生活のための買い出しから、田舎での生活は始まる。

家族たちが買物のためにショッピングセンターへ出かけている間、駅舎の日陰で涼むことになった。待ち合わせまで、何とかして暇を潰さなければならない。さすがにここまで来ると、すぐに都合の良い、適当な喫茶店をといっても、見つけることはできない。

そこでみんなが集まってくるところは、駅舎の待合室しかない。O市は北Photoアルプ スへの玄関口のひとつであり、登山客はここを基点として山に登り下りてくる。登山は朝が早く、午後2時頃はちょうど山から下りてきた人たちが、ここから都会へ戻っていく時間だ。けだるい歩みをして、自分とほぼ同じ重量の荷物を持った人たちが、達成感で満足そうな顔をして話をしている。かれらは山に多くの悩みを捨て去り、すっきりして都会行きの列車に乗り込むようにも見える。

人びとの動きを見ていると、ここでも典型的なネットワーク的転換が起こっていることに気づく。小集団の一員として登山を行ってきた人たちが、この駅舎をくぐると、個人別の登山客になって都会へ戻っていくのだ。この転換は鮮やかとしか言いようがないほど、その行動にあらわれる。

タクシーを乗り合いで利用して、代金を折半する人びともいる。名刺交換して別れる人たちもいる。握手をして別れていく人たちもいる。親しかったグループを解消して、個人に戻っていくのだ。

あれほど、山ではそれぞれのグループを作り、互いの話を山ほどしてきたのに、それは山での出来事として終えて、それぞれ個人の家へ土産話を片手に戻っていく。

おそらくは、これと同等のちょうど逆のことが、登山の始まりにも起こっているのだろう。このときは、個人がグループを作って、登山を開始するのだ。いずれにしても、駅はこのようにして人びとの結節点の役目を果たしている。


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  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。