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2006/08/02

夜の屋形船

K先生、O先生、Yaさん、Yuさん、Nさんと憧れの屋形船に乗った。放送大学の試験期間が終わり、打ち上げ会という意味合いである。品川の船宿からレインボーブリッジの下を通って、お台場をめぐるコースだ。

品川の船宿というと、ジョージ・秋山の漫画「はぐれ雲」を思い出す。現世からゆったりと逸脱した自由さが、着流しに現れていた。

品川駅から船宿までは徒歩で10分ほどなのだが、近年再開発で高層ビルが建ち並び、江戸時代の雰囲気は一掃されていた。ちょうど退社時間であったために、大量の通勤客と真っ向からの反対方向を目指すことになって、人の流れをかき分け進む自分の姿に、思わず「はぐれ雲」の姿を重ね、ジャケットのボタンを外してしまった。060802_185102

船宿は混んでいた。屋形船への憧れは、江戸時代からの庶民の伝統なのかもしれない。けれども、それとは別に、今日屋形船が流行る理由がある。

乗ってみると分かるが、この屋形船はきわめて現代的な装備なのだ。高速船であり、冷暖房完備で、外気を遮るのは障子ではなくガラス戸である。そして何よりも異なるのが、パノラマ的であるということだ。

男女二人で差しつ差されつ、ギシギシと船頭の櫂に揺られて、真っ暗な河を行くというのは、過去の話なのだ。現代は、目的地まで白い泡を黒い海原に蹴り立てて行くのだ。途中の船上では、刺身や天ぷらを食べつつ、飲み放題で、次から次へと出てくるご馳走を堪能する。そして、あっという間にお台場に着き、ビル群のきれいなパノラマを楽しむのだ。

060802_193601江戸時代には、おそらく自然な闇の世界を楽しんだと思われるが、現代では人工的なイルミネイティングな光の世界を楽しむのだ。

船外の海をひとたびのぞき込むと、漆黒の闇が横たわっており、白い泡さえ黒く染めて、誘い込んでしまうような過去の黒い世界がある。かつてのその世界の片鱗を覗かせてくれる。

K先生は屋形船は「密談」の世界ですな、とおっしゃる。親密のドラマが生まれる場所だ。密談を通じて、「親密性」を強固にするには最適の世界である。たとえば、時代劇で、親密性を出そうと思ったら、まずは屋形船だ。男女の「密会」の艶っぽさも、やはり屋形船が良いと思う。そして、昔はこの親密性を保証するものとして、船の周りをめぐる夜の帳があった。このようにして、江戸時代という設定ならば、屋形船は親密性の権化と言えたであろう。

船宿に戻ってみると、今浦島のような気分である。3時間があっという間に経ってしまったのだ。幹事のNさん、ほんとうにありがとうございました。

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プロフィール

  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。