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2006/06/25

「ハゼ」と最初に戻ること

喫茶店を造ることを夢にみる。

父親が晩年、よくこのようなことを言っていた。カレーと珈琲を出す店で、いつも常連がきて、かならずバッハを聴くんだ。

「いざ!!開店」中野弘志著のなかに、現実的な数字が並んでいた。

最小限の自家焙煎の店を開くには「コーヒー豆は1日5㎏を販売、1㎏の単価を4000円として2万円。喫茶は10席、カップの売り単価は300円、1日10回転として3万円、豆売りとカップ売りの合計は5万円。1ヶ月25日稼働で、100万円強の売り上げがあるとする。原価率は30%ほどだから70万円強の粗利である」という見込みを描いてみる。ここまでは、楽しい作業であり、父親も何度となく繰り返し考えていただろう。

けれども、「事業計画は計画であって、ほとんどの場合、その通りにはいかない。1年目の売り上げは、半分以下であろう。3年後に目標が達成できたらよい方である」とのこと。いかに現実的でなかった父でも、現実に戻らざるを得なかったであろう。それ以上は踏み込むことはなかった。

「爆ぜる」というコーヒー豆特有の言葉がある。コーヒー豆を焙煎していて、内側からの膨らみで外皮がはじけることを言う。

日常生活のなかで、ときどき「爆ぜる状態」が訪れることがある。良いハゼと悪いハゼがあるが、いずれにせよハゼ状態が来ると、それが誰であろうと始末に負えない。

でも、ときどきは、このようなハゼ状態を夢見て、何かに賭けるのも素晴らしいことなのかもしれない。多くの場合は失敗することが予想されるが、その時には最初に戻れば良いではないか。

父にも、一度は爆ぜてもらいたかった。そのとき、わたしがその喫茶店を手伝えたかどうかは、まったくわからない。コーヒーを楽しむほうでは右に出るものがいないと自認しているが、コーヒーを提供するだけのイマジネーションとホスピタリティとを持ち合わせているという自信はまったくないからである。

父はもうずいぶん前に亡くなっているが、来週には誕生日が来る。

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  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。