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2006/05/22

「出生率を上げる」と周りはどうなるか

今朝の朝日新聞に、「出生率の上がった村」ということで、長野県のS村が紹介されていた。

出生率を上げる特効薬はない、と言われ続けて久しいが、ついに画期的な方法が生み出されたのか、と一瞬思ってしまった。

記事によると、方法は二つである。ひとつは、「家賃の安い若者向けの村営住宅の建設」であり、もうひとつは、「中学3年生までの医療費の無料化」である。

これによって、隣の飯田市から移り住んだ家族が、子供を二人も産んだ事例を紹介していた。家賃は、飯田市より2万円も安いし、子育てに良い環境が用意されている、ということであった。

この結果、1995年に4千人に満たなかった村の人口が、2005年には4215人にまで増大したとのことである。

ここで注目したいのは、移住してきた新住民が多いという点である。つまり、1260世帯のうち、1割以上が村の外からきたひとであり、その結果人口増大が生じているのだ。

現状からみると、「出生率が上がった」原因は、従来から住んでいる人びとの出生率が上がったのでなく、外から移入した来た人たちの産んだ子供が出生率を押し上げたのだ。

このことは、出生率の上昇とよんで良いのだろうか、と考えてしまう。もし、住民を取られたほかの市町村が自覚して、競争してこのような家族政策を行うようになれば、全体として出生率は上昇することになるであろう。

けれども、一村が単独で住宅政策や、子育て政策を行ったとしても、ほかの市町村に住んでいる人が、単に移り住むだけで、それによるその村だけの人口増大が起こるだけである。

もっとも、これまでいくつかのシンクタンクが指摘してきたように、このS村の取り柄は、じつは歳出施策のほうではなく、むしろ「財源捻出」方法にある。たとえば、「住民自身による公共事業の実践」や「役場の職員削減」などで、S村は黒字経営となっているからである。

このような工夫全体が、新たな政策を行う動因となっているらしい。したがって、これらのリストラクチャリングを効率よく行った村として、評価されているのであればその通りだと思われる。

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  • 坂井素思
    放送大学教員で、社会経済学領域を研究しています。